多様性と境界に関する対話と表現の研究所

アートカウンシル東京

【週報】育み育まれる土壌:ご近所イノベーション学校・2016年度インターン生活動報告会に参加して

2017年02月14日

先日、「ご近所イノベーション学校・2016年度インターン生活動報告会」に参加してきました。
今日は、そこで感じたことを書いてみたいと思います。

ご近所イノベーション学校」は、港区と慶應義塾大学の連携によって実施されている、地域づくり事業。地域にかかわる一人ひとりが「やりたいことをまちにつなげる」ことで実現する新しい地域づくり=「ご近所イノベーション」を、様々なかたちで支援するプロジェクトです。diver-sionの理事でもある坂倉杏介さんが中心となり、コミュニティスペース「芝の家」(diver-sion事務所のお向かいにあります)、コミュニティ活動の拠点「ご近所ラボ新橋」コミュニティ活動の人材育成「ご近所イノベータ養成講座」、などを運営しています。

 

今回は、各事業にインターン生として参加した学生が、2016年7月〜11月の5か月間にわたり経験した場づくりの体験や、プロジェクトの運営について報告する会でした。場所は、ご近所ラボ新橋。ここで継続的に活動する「対話ラボ」メンバーの主催です。

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この日の参加者は20名ほど。
まずは、もちよりの晩ごはんをみんなで食べてから、報告が始まりました。

 

登壇者は、次の3人。

あすちゃん(東京都市大学:ご近所ラボ新橋)

かなちゃん(慶應義塾大学商学部:ご近所イノベータ養成講座)

ようちゃん(明治学院大学文学部芸術学科:芝の家)

 

告知チラシのゆるさ(なんと、登壇者3人の顔が「へのへのもへじ」になっている斬新なデザイン!) とはうってかわり、報告は真剣そのもの。

あすちゃんは、「ご近所ラボ新橋」で、地方の先端的な地域プロジェクトを学び、インターローカルな交流を24時間続ける「24時間トークカフェ」に参加しました。企画の一つを任され、接したことのない相手とやりとりをしながら作り上げていく責任の重さに、最初は大変な思いをしたそう。関わる人たちととにかく話しながらやっていき、苦手だと思っていたリーダーの役割も、思ったより出来るようになったといいます。

かなちゃんは、「自分のやりたいことをまちにつなげる」技法を学ぶ、少人数制の実践型講座「ご近所イノベータ養成講座」で、事務局スタッフとして受講生のサポート役を担いました。「自分を生かすまちづくり」に取り組む受講生の姿に影響を受け、自分のやりたいことの実現に向けて一歩を踏み出しました。今は、食堂を借りて定期的に「ごはん屋さん」を開いています。リピーターになってもらうには、「お客さんに、自分の想いをしっかり伝える」ことが大切とのことでした。

ようちゃんは、誰もが自由に出入りできる地域の居場所「芝の家」で、年に一度のイベント「いろはにほへっと芝まつり」の企画運営に携わりました。もともと人見知りで、「自由に過ごしていい」と言われても、どうしていいかわからなかったそう。しかし、定期的に通ううちに少しずつ顔見知りが増えて、居場所ができていったといいます。道端で、芝の家によく遊びに来ている小学生の子どもに、「芝の家のお姉さんだ!」と声をかけられたエピソードなどが語られました。

3人それぞれに、半年間で得た確かな手ごたえが伝わる報告で、眩しかったです。

 

これまで3人とも、学校や家庭、アルバイト先以外での人との関わりが少なく、インターンで出会ういろんな人とどう接したらいいのか、最初はとても戸惑ったそうです。その戸惑いをどのように乗り越えてきたのかについて、報告では、ある共通の過程が語られていたように思いました。

 

とにかく一歩踏み出して、やってみる。
すると、一生懸命に取り組んでいる周囲の人々が見えてくる。助けてくれる。
こうして、自分もその場の一員になっていく。

このことについて、坂倉さんのコメントが印象的でした。

「人が成長しようとするときには、ふわふわした土壌があって始めて、種が殻を破るようにして芽を出すことができる。周囲の大人たちがいて、いろんな活動やつながりを育んできたからこそ、若い人たちがとにかくやってみることを可能にしたのだと思うし、そのことを実感できたことがうれしい。また、成長しようとする人には「成長する」という役割があって、周囲の人たちがその成長しようとするさまを目の当たりにし、エネルギーに触れることによって、教える立場だった人もじつは教わっているという、循環が起こっている」。

じつは、報告者のひとりは、私がある大学で担当している講義の受講生でもあったのですが、堂々と発表する姿を見て「本当の意味で学ぶ場所とは、こういう場なのだなあ」と思いました。報告を聞きながら、自分自身に新鮮なエネルギーが満ちてくる感覚がありました。

多様な人が、自分の芽を出し、自分らしく生きていくこと。
それはやはり、一人ではできないのだと思います。
互いが互いの土壌となって育まれる場の大切さを、あらためて実感する時間でした。

(三宅博子)

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