多様性と境界に関する対話と表現の研究所

アートカウンシル東京

【開催報告】「現場から言葉をつむぐ ゼミナール」第2回

2016年07月04日

6月24日(金)、「現場から言葉をつむぐ ゼミナール」の第2回を開催しました。
今回のテーマは、<伝えるべき相手を考える>。これからつむいでいく言葉は、いったい誰に向けて発せられるものなのか、ということについて考えました。

第1回では、「自分の伝えたいこと」に関わると思う言葉を、思いつくまま書き出し、それぞれの言葉の関連や意味などを細かく見ていくことにより、「問い」を見つけてくるという課題が出ていました。最初は、その課題発表です。それぞれの現場や生活で直面している実感から編み出された「問い」と、その「問い」に至った経緯を、ひとりずつじっくりと発表しました。

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続いて、梶谷先生のレクチャー。
今回のテーマは、<伝えるべき相手は誰か?>です。言葉をつむいでいくときには、まず、自分の言葉を誰に伝えたいのか、その相手はどんな人か、ということを具体的にイメージをする必要があるといいます。その上で配慮すべきポイントは、その相手と自分との距離です。すでに関心を持っている人、潜在的に関心を持ちうる人、関心をおそらく持たない人、反感を持っている人…。伝えたい相手は、どのような性質を持っていて、自分とどのような関係なのか。それによって、言葉の内容やそれを伝える手段もおのずと変わってきます。例えば、伝えたい相手が同業の専門家なのか、隣接する分野の専門家なのか、それとも当該分野における知識を全く持っていない人なのか、によって、つむがれていく言葉は180度変わってしまうのです。

何か言葉をイメージしたとき、大抵の場合は、その言葉を伝えたいと自分が想定している相手がどこかに存在しているはず。単に「みんなに伝えたい」とだけ思って文章を書いていくと、結果的に誰にも伝わらない言葉になる可能性が高くなってしまいます。伝える対象を意識しなくても、文章は書けてしまいますが、だからこそ意識しないと分からない、見えてこない部分があるのです。梶谷先生は、そのような誰にも向けられていない言葉は、実は巷にあふれかえっているのではないかといいます。

伝えたい相手は、例えば、友達や家族など、身近で具体的な個人でもいいとのこと。そこを起点に考えることで、結果としてその対象と似たような属性を持つ人々にも伝わるような言葉がつむがれていきます。

どうしても対象を想定することが難しい場合は、小学5年生くらいのこどもに向けるつもりで書いてみると、比較的誰にでもわかりやすい言葉になる、とのアドバイスもいただきました。

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今回は、質問の時間をじっくりとったため、ワークの時間が始まる前に時間切れ。次回までの課題は、「『誰に』を明確にして、問い・テーマの言葉を変えていく」。次回からは、よりワークを中心とした構成になっていく予定です。

今後の展開が楽しみです!
(石橋鼓太郎)