多様性と境界に関する対話と表現の研究所

アートカウンシル東京

【開催報告】「現場から言葉をつむぐ ゼミナール」第1回

2016年06月19日

6月3日、今年度の新たな試みである「現場から言葉をつむぐ ゼミナール」の第1回を開催しました。

「現場から言葉をつむぐ ゼミナール」は、ケア、アート、教育、地域、家庭や職場などの多様な人々が関わり合う分野で、参加者自身が関心を寄せる活動や現場について「他者と共に考え、言葉にすること」に取り組んでみる、全6回の連続講座です。第1回は、参加者の自己紹介から始め、テーマ「核になる言葉を見つける」のもと、「自分の思いの核になるものを語るべき言葉を見つけること」について話し合いました。

まずは、自己紹介。
受講生16名、講師の梶谷真司さん、diver-sionメンバー3名が輪になって座り、順に「1分で自己紹介」。それぞれの興味や関心について語ります。福祉、教育、アート、企業など、携わっている「現場」も、そこで感じている問題も、一人ひとり様々ながら、人との関わりのなかで「言葉」を探そうとする目的を持って集まった人たちの話に、思わず引き込まれながら聞き入りました。

続いて、梶谷さんのレクチャー。
大学教員として、学生の就活書類や論文の指導をしたことが、「書く」ことに向き合うきっかけだったという梶谷さん。学校で「てにおは」などの文章作法は習っても、「自分のいちばん伝えたいこと」を、きちんと伝えるために「書く」ことを学ぶ機会は全くないといいます。
では、自分の伝えたいことを、きちんと相手に伝わるように書くには、どうすればいいのでしょうか。それは、「何を」「誰に」「なぜ」「どのように」伝えたいのかを考え、目的に合わせて書いていくことだといいます。たとえば、就職活動で自分の“コミュニケーション能力”をアピールしたい場合、銀行・居酒屋・幼稚園など、職種や仕事内容によって、必要とされる能力の中身は異なるはず。そこで、伝えたい相手と自分との関係を考え、使う言葉を選び、語る順番を組み立てていく。この作業をへて、自分のことを伝え、目的を果たす「機能する」文章となるのです。このことは、参考文献として梶谷さんがあげてくださった、山田ズーニー著『伝わる・揺さぶる!文章を書く』(PHP新書)に詳しく書かれているので、ぜひ読んでみてください。
受講生からの質問タイムでは、出された質問に対して「答え」を与えるのではなく、話を聞きながら一緒に考える姿勢が印象的でした。

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ゆっくりと時間をとっての質問タイムに続いて、本日のワーク。
本日の課題は、自分にとっていちばん大事な「問い」を立てること。やり方は、まず、「自分の伝えたいこと」に関わると思う言葉を、思いつくまま書き出していきます。ポイントは、「書いてから考える」こと。考えてから書こうとしたり、考えながら書いたりするのではなく、とにかく手を動かし、紙に書いていくことが大切です。このなかでいちばん大事だと思う言葉を選び、その言葉にまつわる問いや論点をさらに出していきながら、「問い」のかたちにします。受講生の一人にモデルになってもらい、一緒に「問い」をたてる作業を体験したところで、時間となりました。

初回から濃い内容で、これからどうなっていくのか、とても楽しみです。次回は、受講生がそれぞれ立ててきた「問い」を発表することから始めます。みなさんも、よかったら一緒に、ご自分の「問い」を立ててみてください。

(三宅博子)