多様性と境界に関する対話と表現の研究所

アートカウンシル東京

【週報】今年度のステートメントについて

2016年05月12日

こんにちは、石橋鼓太郎です。

ゴールデンウィークも終わり、すこし汗ばむ季節となってまいりましたが、
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

さて、今年度の東京迂回路研究、ただいまいろいろな企画を練り上げている真っ最中です。
一年目、二年目を経て、三年目に突入する今年度。
今の状況や、私たちの考え方の変化を踏まえた、新たなステートメントを作成しました。
ぜひご一読いただければ幸いです。

 


近年、「多様性」という言葉のもとに、多様な人々が共に生きる社会を目指したさまざまな取り組みがおこなわれるようになりました。多様な人々が多様なままに共にあること。それには、互いのありようや、その異なりに目をむけることが不可欠です。そのとき、その異なりは、いったい何によって生まれるものなのか。また、その異なりを作り出す「境界線」は、どのように引かれ、そして引かれ直されるものなのか。このような状況にある今だからこそ、私たちは、もう一度立ち止まり、この問題について深く考え直してみる必要があるのではないでしょうか。

東京迂回路研究では、「障害、ケア、労働、住処、ジェンダーやセクシュアリティ、国籍……社会のなかにある多様な生き方と、そのひとつひとつに引かれている境界線を丁寧にみていくこと」をテーマに、社会における人々の「多様性」と「境界」に関する諸問題に、調査・研究・対話を通じてアプローチしてきました。一年目・二年目は、なかでも、‟生き抜くための技法”としての「迂回路」をさぐり、つなぐことを目的とし、事業を進めてきました。その道のりで徐々にわかりつつあるのは、「迂回路」とは、行き止まりに突き当たった人々が脇に逸れて新たに開拓する道なのではなく、日常の中における自分と他者の関係、そして自分と自分の関係が変わることで、他者との間に立ち現れてくるような道なのではないか、ということです。

三年目となる平成28年度は、「迂回路をつくる」というテーマを設定しました。私たちの手で迂回路をつくり提示するのではなく、人々がそれぞれの立場からそれぞれの迂回路を見つけ、そのあり方を共有し合うことで、そこからさらに新たな迂回路が立ち現れてくるような活動を目指していきたいと思います。


 

私は、diver-sionの立ち上げの際にはいなかったのですが、
昨年度にインターンスタッフとして関わり、さまざまな人々との「対話」をおこなう過程で、
私自身をはじめ、研究所メンバーや、企画に参加いただいた人々の考え方が少しずつ変わっていき、
そのことをさらにシェアしあうことによって、自分の目の前に新たな道が開けていくような感覚をおぼえました。
このような過程を通じて立ち現れてきた道こそ、自分にとって「迂回路」と呼ぶことができるものなのではないか-
このステートメントを執筆する過程で、自分の一年間の道のりを辿るように、そんなことを考えました。

今年度は、みなさまとよりじっくり「対話」を続けていく中で、
言葉を練り上げていくような一年間にしたいと思っています。
具体的な企画の内容や日程に関しては、決まり次第ウェブにアップさせていただく予定です。

今年度も、どうぞよろしくお願い致します!

(石橋 鼓太郎)