多様性と境界に関する対話と表現の研究所

アートカウンシル東京

【週報】シンポジウム「ご近所イノベータの時代」に参加しました

2015年11月10日

集合写真(デラコさん付き)
写真:飯塚 正倫

diver-sionの事務所は、港区の芝というところにあります。実はこの芝地区、港区芝地区総合支所と慶應義塾大学の連携による、とてもユニークな地域の取り組みが行われているところなのです。「報告と対話編」の開催でお世話になっているコミュニティスペース「芝の家」運営も、その一つ。さらに面白いのが、地域で活躍する〈人財〉を育てる、「ご近所イノベーション学校」。地域にかかわる一人ひとりが「やりたいことをまちにつなげる」ことで実現する新しい地域づくり(=「ご近所イノベーション」)を、さまざまなかたちで支援するプロジェクトです。
昨年、diver-sionが活動を開始した際に、この地域に根差してやっていければいいなあという思いから、三宅が「ご近所事務局ゼミナール」という連続講座を受講しました。ちなみに、代表の長津は、講師をしています。…ここでは「先生―生徒」の関係なのです(笑)

そんなご縁で、11月3日(火)、「ご近所イノベーション学校」の成果発表シンポジウム「ご近所イノベータの時代」に参加してきました。受講生たちのやりたいこと、得意なことを生かしたまちづくりの活動はとても多彩。ゴミを拾いながら集合場所に集まり、楽しく交流する「De AI HIROU」、地元の“ご当地ワード”を皮切りにトークを繰り広げる「ジモトーーク!」、芝地区のお寺を開いて地域交流の拠点にする「芝の寺~心のともしびを持ち帰ろう」、手作り防災グッズやおいしい非常食クッキングなど、楽しみながら防災に備える「芝ヴァール・パーティ」…。三宅は、芝の家で定期的に行っている、大人から子どもまで参加可能な音楽ワークショップ「音あそび実験室」の紹介をしました。
小さいけれど、生きるためのちょっとした喜び、楽しみ、安らぎ、必要なことなどを地域の人々が自らの手で作り出す取り組みは、その一つひとつが貴重に思え、ずっと続いていってほしいと願わずにはいられませんでした。

和歌山県立医科大学岡壇さんの講演「生き心地の良いご近所」も、大変印象に残るものでした。日本で“最も”自殺率の低い町・徳島県海部町の調査から得た、息苦しさや生きづらさを減らし共存する「生き心地の良い」コミュニティの要素を、次のように挙げられました。

1. 緊密すぎないゆるやかな人間関係
2. 多様性の重視…いろんな人がいた「ほうが」いい
3. 人の評価は多角的に、長い目で見る
4. どうせ自分なんて、と考えない
5. 助けを求める、弱音を吐ける

なるほどなあ、と納得することしきりでした。これまでdiver-sionが行った調査先でも、このような要素が語られたり、その場の様子から見出されたりすることが多々あります。海部町に伝わることわざ「病、市(いち)に出せ」(病は抱え込まず、人に話してオープンにするのがよい)は、べてるの家の当事者研究を彷彿とさせるし、「一度目はこらえたれ」(大きな失敗をしても、それで終わりではなく、挽回や敗者復活のチャンスを与える)も、人を切り捨てない暖かさを感じました。
いつか、海部町へ行って、まちの空気に触れてみたくなりました。

(三宅博子)