多様性と境界に関する対話と表現の研究所

アートカウンシル東京

【週報】〈狡知〉の視点から見た「迂回路」とは?―分析編・第3回

2015年11月24日

冬の気配が近づく11月19日。diver-sion事務所では、今後のイベントに向けての準備や、今年度のジャーナルの構想など、「冬支度」を整える作業をしました。

そのなかから今日は、12月23日(水・祝)開催の「もやもやフィールドワーク分析編・第3回」について、書いてみたいと思います。分析編では、毎回、既存の言説や状況を問い直す「迂回路」的な視点を持つ研究者をゲストコメンテーターにお招きして、「東京迂回路研究」で行っていることを理論的な視点から検討しています。

今回のゲストは、文化人類学者の小川さやかさん。小川さんは、アフリカ・タンザニアでの長期に渡るフィールドワークを通して、タンザニアの古着商人が仲間どうし騙し合い、助け合いながら商売を成り立たせる〈狡知〉の視点を提起し、大きな話題を集めました。〈狡知〉(Ujanja:ウジャンジャ)とは、スワヒリ語で「ずる賢さ」を意味する言葉。路上では、中間卸売商と小売商と客のあいだで、機知に富んだ会話や策を互いに弄しながら、いかに古着を売りさばくかという駆け引きが日々行われているそう。小川さんの著書「都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌」には、不安定な都市生活をサバイブする商人たちの生が、生き生きと描かれています。小川さん自身も、商人として古着を売りさばき、地元でも有名な存在だったそうです!

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(写真:小川さやかさんホームページより)

そんな小川さんをお招きして、今回は、生き抜くための「迂回路」のありようについて考えます。身をもって〈狡知〉を体感してこられた小川さんの視点から、東京迂回路研究における「迂回路」がどのように映るのか、コメントをいただきながら議論を深めていきたいと思います。

研究所員からの発表準備の一環で、東京迂回路研究にとって「迂回路」とは何か?を定義づける作業をしました。まず、「迂回路」という言葉が指し示すと思われる要素をみんなで挙げていき、「この要素を外したら“迂回路”ではなくなる」というものを残し、残った言葉をつなぎ合わせて「迂回路」の言葉を定義づける、という手順です。今、私たちが考える「迂回路」のありようが意外なほどクリアに見えてきて、とても面白い作業でした。当日は、この暫定的な定義を参照しながら、調査で出会った事例を整理してみたいと思っています。

一緒にテーブルをかこみ、積極的に議論に参加いただける方、お待ちしております!
お申込みはこちらからどうぞ。

(三宅博子)