多様性と境界に関する対話と表現の研究所

アートカウンシル東京

もやもやフィールドワーク 分析編 第1回 報告

2015年06月02日

今年度よりスタートした「もやもやフィールドワーク分析編」。
毎回、既存の言説や状況を問い直す「迂回路」的な視点を持つ研究者をゲストコメンテーターにお招きし、研究員の発表とそれに対するコメント、参加者全員によるディスカッションを通じて、「もやもやフィールドワーク」で得た実践知をつなぎ、深化させることを目指します。第1回のゲストは文化人類学・医療人類学がご専門の、筑波大学助教の照山絢子さん。また、一緒にテーブルをかこみ、積極的に議論にご参加くださる方を募集し、実施いたしました。
moyamoya-bunseki1-3

研究員の発表の主な内容は「調査編の過程で直面した問い」。
昨年度、さまざまな「場」(調査先)に赴くなかで感じた問いを改めて見つめ、その問いが生まれた背景について考察しました。
「どうやって言語化することが可能か」――その場で感じた「?」、よくわからない感覚をどのように記述すればよいのか、その場での経験からどのようにして「テーマ」を見出すのか・・・
「特定領域に内在する独特のコミュニケーションをいかにして読み解くことが可能なのか」――自らがその特定領域に身をおいていない場合、経験のなさから生じる「気づかなさ」にどう向き合うか・・・
などといった問い。
moyamoya-bunseki1-2

それらに対し、まずはゲストの照山さんの視点からコメントをいただきました。「記述の方法~データから論文へ」、「データの中の注目すべき箇所とは?」、さらに「コミュニケーションを読み解くということについて」などヒントをいただきました。ある視点から切り取ることで立ち現われる事象を丁寧に記述していく・・・「すでに見えているけれど、まだ見ていないものをそっと掬いあげる」ようなその営みを、私自身続けていきたいと改めて思いました。
moyamoya-bunseki1-1

最後は、参加者全員でディスカッション。研究者に限らず、様々なバックグラウンドの方にご参加いただけたことで幅広い視点からのご意見をいただけました。「研究がもやもやした中から形作られていくプロセスの一部を見せてもらったような感じです」との感想も。それはまさに今回の「分析編」の狙い。
もやもやフィールドワークの、テーマのひとつは<「問い」をひらき、考えていくこと>。
引き続き、イベントへの参加というかたちで、一緒に「もやもやフィールドワーク」をつくっていってくださる方を募集します。どうぞよろしくお願いします!
(報告:井尻貴子)

※次回の催しは6月18日(木)19時~21時 「もやもやフィールドワーク報告と対話編 第7回」です。
回は、昨年度の活動を経て発行した「JOURNAL 東京迂回路研究 1」から主に、「対話型実践研究」のデザインと、そこに辿り着く過程で考えたことについて報告します。 また、後半は、哲学カフェのスタイルで、その場に集まった人たちが、進行役のもと、〈話す―聴く〉を丁寧に積み重ねて じっくり考える対話の場を持ちます。 分野を問わず、関心のある方のご参加をお待ちしています。
イベント詳細、お申し込みはこちらへどうぞ
http://www.diver-sion.org/tokyo/2015/05/moyamoya7/

※「もやもやフィールドワーク」とは、東京都および近郊エリアの、医療・福祉施設、当事者団体、ケアに関わる団体等を訪問し、活動の参与観察や関係者への聞き取りを行う「調査編」と、その調査で得られた見解や視点を参加者と共有し、ともに話し合い考える「報告と対話編」、研究者をゲストに招き、理論的・方法論的な視座から考察を深める「分析編」からなる研究プロジェクトです。
調査・報告・対話・分析のサイクルを通じ、さまざまな場を捉え直すことを試みています。